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平行四辺形も台形ですか? [算数教育の話]

「平行四辺形も台形ですか?」という問いに対して、ひとつ答えを出すと、

「定義の仕方のよって異なる」

ということです。
平行四辺形の日本の教科書の定義では、
「向かい合う2組の辺が平行な四角形」
というようになっています。
一方、台形は
「向かい合う1組の辺が平行な四角形」
です。

問題は、日本語特有の「あいまいさ」にあります。
この定義の中の「1組」というのは、「1組以上」なのか、「ちょうど1組」という意味なのかがはっきりしていないのです。
なので、人によっては、ちょうど1組なんだから、
「平行四辺形のように2組とも平行になっていたら当てはまらない」
ととる人もいますし、
「平行四辺形だって1組は平行な辺があるんだから当てはまる」
ととる人もいます。

まあ実は、どちらでとっても構わないのですが、重要なことは一貫性です。

数学で重要視されるのは、論理です。
ある時は「AはBだ」といっていたのに、別の時になったら「AはBではない」などと言っていたら、これではとても論理的であるとは言えません。
ひとつの論理体系の中で、矛盾することを述べるのは近代の数学ではあり得ないでしょう。

また、別の機会にこの話について掘り下げたいと思います。

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flute23432

小学校の低学年から高学年、中学、高校と、子どもの思考の発達は、入れ物に知識が次第次第に満たされていくような単純な過程ではなく、ダイナミックに発展していくものです。図形で言えば、イメージ的な思考から、定義を基礎に置く論理的な思考へ、特定の生活的・物理的な状況のなかに位置づけられた図形・立体から、等質な空間に配置された図形・立体へ、と変わっていきます。

この発展過程では、数の概念は、事物の数から量を表す数に(整数から小数や分数に)、そして、割合や比を表す数へと変わっていきます。「小さな数から大きな数を引けない」という命題が真から偽に変わり、直線と一括されていたものが半直線と線分と直線に区別され、図形や立体は自由に回転したり自由に視点を設定できるような対象に変わっていきます。

この過程には、論理的な一貫性という基準はまったく馴染みません。極端な場合を考えてみて下さい。乳幼児の思考と高校生の思考のあいだに一貫性を要求できますか。乳幼児と高校生は、「ひとつの論理体系」のなかにはいません。「粘土を細かく分けたり平たくしたりすれば軽くなる」と思っていた段階から、「形状の変化は重量に影響を与えない」という認識を獲得した段階のあいだに、一貫性を求めるべきでしょうか。論理的な一貫性は、大人や、論理的な思考を獲得した年齢の子どもが、ある論を展開したときに、その論の進め方(理由付けなど)について、求めるべきものです。

図形の包摂関係については、現代化算数の時代に集合概念を使って教えられていました。クラスのほとんどの児童が理解できず、大混乱となりました。その後もしばらくは、封筒から長方形の紙を少しずつ出す方法で、正方形が長方形の特殊な場合だと教えられていましたが、ゆとり時代の終了とともに、包摂関係については触れられなくなりました。今は、中2で、ベン図を使って、平行四辺形と長方形とひし形と正方形の集合のあいだの包摂関係を学習しています。不勉強だった人以外、中学なら、みな、卒業しているのだから、図形の包摂関係は、別に数学が得意な人でなくても、包摂関係については知っています。

「これは、実際にあったことなのだが、ある児童が、「平行四辺形(ア)も台形じゃないんですか?」と、質問したのである。…その質問をした子は、「平行四辺形だって1組は平行な辺があるんだから、台形のなかまじゃないか」と考えて質問したのに…」
この児童は、あなたが、平行四辺形は台形の一種だと、あなたが自分の算数クラスで入れ知恵をした、という話ではないでしょうか。でも、その児童が、平行四辺形が台形の一種である理由まで理解していたかどうか、とても疑わしいと思っています。「「平行四辺形だって1組は平行な辺があるんだから、台形のなかまじゃないか」と考えて」という部分は、あなたの推測ではないでしょうか。

「教えやすければ、矛盾しようが都合の良いように定義をねじ曲げても良いのか?」 算数の例ではありませんが、子どもが小学生のときに「9時までに寝なさい」ということと、中学生になって「10時まで起きてていいよ」と言うことは、矛盾でしょうか。全然矛盾ではありません。図形の包摂関係のような、多くの教育心理学者たちが小学生(や中学生)にも理解が難しいと判断していることを無理に教えるならば、現代化数学の時代に起きたように、算数がわからなくなり、落ちこぼれる児童が増加します。小学校の段階で、算数が嫌いになれば、中学高校の数学の勉強への展望は消滅します。一貫性どころではなくなってしまいます。

さまざまな図形から、正方形や長方形、平行四辺形や台形を選ぶ設問は、よくあるタイプの図形の問題です。あれは、教科書に長方形の例として描かれているような【典型的な】長方形のイメージを選ぶ問題で、長方形の解答欄に正方形の記号を書く欄がないからと言って、正方形が長方形であることを否定しているわけではありません(肯定しているわけでもありません)。
by flute23432 (2019-06-24 22:52) 

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