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平行四辺形と台形の定義と包摂関係 [算数教育の話]

前回、平行四辺形と台形の定義についてお話しました。

台形の定義として、
「向かい合う1組の辺が平行な四角形」
の「1組」という言葉が「1組以上(あるいは、「少なくとも1組」)」という意味なのか、「1組だけ」なのかで、平行四辺形も台形とするかどうかが決まり、どちらで定義しても構わないが、一貫性が大切だということでした。

(ちなみに、この定義を「1組だけ平行」と捉えるならば、平行四辺形だけではなく「ひし形」や「長方形」、「正方形」も台形ではないということになります。)

一貫性というのは、つまり、「平行四辺形は台形ではない」という立場を取るのであれば、その後もずっと、その立場を崩してはならないということです。
ある時には
「平行四辺形は台形ではありません」
と言っておきながら、また別の時には、
「実は平行四辺形も台形でした」
などと立場を変えられては、とてもじゃありませんが論理的とは言えないでしょう。

実は、このような非論理的なことが、小学校の算数指導において日常的に行われているのです。

なぜ日常的に行われているかというと、
現在の算数の教科書がそのように作られているからです。

教える側の教師も、多少算数や数学に詳しい方であれば、「何かがおかしい」と気づくはずです。
気づいていても、「教科書にそう書いてあるから、まあいいんだろう」と軽く考えている。
教科書会社も、そんな矛盾点があることにも気づかずに、「まあ、そういうものなんだろう」程度に捉えており、一向に改定する気配がありません。

なぜこのような事になっているのかと言うと、算数を教える上で、
「分かりやすさ」
「指導しやすさ」
を優先に考えることに、そのような矛盾も軽く見てしまう原因があるのではないかと思います。

確かに、平行四辺形と台形がどのような四角形かを教える段階では、
「平行四辺形は平行四辺形」
「台形は台形」
と、まったく別物として扱った方が、子どもたちも分かりやすいのです。
つまり、
「この四角形は1組だけ平行な辺があるから台形」
「この四角形は2組とも辺が平行になっているから平行四辺形」
と、まったく区別して教えるのです。
(このことは、2年生に正方形と長方形を教える段階でも同様のことが言えます。)

現在の算数では、台形や平行四辺形について教えても、それらの包摂関係については深入りしないこととなっています。
包摂関係とは、例えば、
「正方形は長方形の仲間である」・・・(正方形)⊂(長方形)
「平行四辺形は台形の仲間である」・・・(平行四辺形)⊂(台形)
のように見る考え方です。
別の分かりやすい例えで言えば、
「人間も生き物の仲間である」
というような見方です。
人間だって生きているんだから、その点では他の生物と同じ仲間ということです。

ですが、多くの教科書や教師は、このような包摂関係を考えるときになって、
「実は平行四辺形も台形と見ることができます」
などと、手の平を反すことになるのです

では、
教えやすければ、矛盾しようが都合の良いように定義をねじ曲げても良いのか?
ということです。

私個人としては、そのようなご都合主義的な立場で算数を教えてほしくないと思っています。

正直、初めて教科書の中で平気でこのような矛盾が書かれているのを見て、失望にも似た感情を抱きました。
こんな教科書は他の国の教育関係者に見せたら、はっきり言って笑われるだろうなと。

ただただ批判するだけでは意味がないので、では、

本当に日本の教科書ではそうなっているのか?
他の国はどうなんだ?

といったことについて、次回以降またお話できればと思います。

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