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ルート2が無理数であることの証明に関する疑問と注意点 [数学研究室【一般向け】]

2の平方根であるルート2が無理数であることは高校数学で証明法を学びますが,以前から1点ひっかかる点がありました。

背理法による証明が有名だと思いますが,その証明の中で次のような説明を目にすると思います。
「q^2は2の倍数。よってqも2の倍数。」
※q^2はqの2乗の意味
これは,教科書などに載っている証明でもこのように書かれているのですが,次のサイトから引用しました:
https://mathtrain.jp/sqrt2irrational

私が高校生の時,この証明を見て

えっ,なんでqも2の倍数なの??

と思ったことを今でも覚えているのですが,みなさんも疑問に思ったことはないでしょうか?

さらっと「よってqも2の倍数」と説明もなく書かれていますが,実はこの部分にこそ,ルート2が無理数であることを示す重要なカギが隠れているんです。

少し考えてみましょう。

「q^2は2の倍数。よってqも2の倍数。」・・・(A)

では,

「q^2は4の倍数。よってqも4の倍数。」・・・(B)

も成り立つのでしょうか?

答えはもちろんNOです。

似たような推論なのに,(A)は成り立ちますが,(B)は成り立たないんです。

もし仮に(B)が成り立てば,ルート2が無理数であることと全く同じ証明で,ルート4が無理数であることを示せることになってしまいます。
もちろんルート4は2ですから,そんなことがあってはおかしいのです。

ではなぜ(A)が成り立つのかというと,2が素数だからなんです。

(A)の推論の中に隠されていたカギを付け足して書き直すと,

「q^2は2の倍数。2は素数なので,qも2の倍数でなくてはならない。」・・・(A')

ということなんです。

2が素数だからこの推論は正しくて,逆に4は素数ではないから(B)は正しくない。
だからルート4に対してはこの証明法は使えないんです。

では,なぜ(A)が成り立つのかというと,
q^2 が2の倍数ということは,
q×q が2でわり切れるということですが,
2は素数なので,q自体が2で割り切れる数でなくてはならないからなのです。
(これは,実はユークリッドの補題の特殊な場合になっています。)

別の言い方をすれば,qを素因数分解したときに2が素因数になければ,q×qを素因数分解しても2は現れないことになってしまうから,q×qが2を素因数としてもつなら,q自体も2を素因数として持っていなければならないということです。

一方,素数ではない4の場合はこの理屈は通用しません。
なぜなら,
q×q が4でわり切れたとしても,qは2で割り切れる数であれば十分だからです。
実際,q=6 だったとすると,qは4でわり切れませんが,q×q=36 は4で割り切れる数になっていますね。

この隠されたカギを理解しておかないと,本当の意味でルート2が無理数であることを理解できたことにはならないのではないでしょうか。

注)q×q が2の倍数ということは,q×q が偶数ということです。
 偶数×偶数=偶数,奇数×奇数=奇数
なのでq は偶数でなくてはならない,と理解することもできますが,本質はやはり2が素数だからという点でしょう。その本質を理解することで,2だけではなく,他の素数の平方根が無理数であることも同様に証明できることになるのです。

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