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偶数と整数は同じ個数?【数学で最も面白い話】 [数学研究室【一般向け】]

私が数学で最も面白いと感じたことは何かと問われれば,間違いなく

偶数と整数の個数は同じ

ということでした。

普通に考えて,整数の一部が偶数なんですから,整数の方が個数は多いだろうと思いますよね。

ですが,実は整数も偶数も同じ個数あるんです。

私がこのことを学んだのは,大学1年生の時だったと思いますが,このことを知ったとき,数学の本当の面白さというか,奥深さに衝撃を受けたことを覚えています。

今の数学教育で非常に残念なことは,この最も面白い数学の事実を大学生になるまで学ばないということです。
しかも,大学生といっても数学を専攻するような学部でしかこのことは扱わないでしょう。

数学を大学で専攻する方など少ない方でしょうから,日本人の多くは数学における最も興味深い事実を知らずに数学を学ぶことを終えてしまうのです。
(「日本人は」というのは,単に他の国々ではどうか知らないからです。)

〇個数とは?

そもそも個数とは何かというと,小学1年生が初めに数を数えるときには,おはじきなどを指でさしながら,「1,2,3,・・・」と数えていくわけですね。
おはじきなどの物と,「1」「2」「3」という数を1対1に対応させることで数を数えるのです。

例えば,☆の記号が下のように並んでいたとしましょう。
☆☆☆☆☆☆☆☆
これらの星に,1から順番に整数を対応させていきます。
☆☆☆☆☆☆☆☆
12345678
すると,すべての☆に整数を対応させることができたので,この☆の個数は8個だということになります。

〇偶数と整数の個数

では,本題に入りますが,有限の区間であれば,もちろん偶数よりも整数の方が多くなります。
例えば,1~100の中には,整数は100個あり,偶数は半分の50個です。

有限とは限りが有るということですが,無限になると話は変わってきます。
正の偶数を小さい方から順に並べていきます。
2,4,6,8,10,12,14,・・・
これらの偶数に,整数を1対1に対応させていくとどうなるでしょうか?
2,4,6,8,10,12,14,・・・
1,2,3,4, 5, 6, 7,・・・
このように,
2に対して1
4に対して2
6に対して3
・・・
と,すべての偶数に対して整数を1対1に対応させることができます。

この1対1対応により,偶数は整数と同じだけ個数があるということになります。

有限であれば偶数の方が整数より少ないのに,無限になると同じ個数ということになってしまうのです。

有限の世界と無限の世界の違いを語る非常に面白い話だと思いませんか?

同じ理由で,無限の世界では,
奇数,偶数に限らず,3の倍数や4の倍数などもすべて整数と同じ個数
ということになります。

より正確には,有限の場合と区別して,無限の時には個数ではなく「濃度」という表現を使います。
偶数全体の濃度は整数全体の濃度と等しいという表現です。

実は無限の世界では,有理数(分数で表現できる数)ですら,整数と同じ濃度であることが証明できます。

〇高校までの数学教育に足りないもの

こういった話は整数論の基礎になりますが,高校の数学ですら一切このことに触れないことは非常に残念だと思います。
受験数学などと言われるように,ただ問題を解くためのテクニックを学び,あたかもパズルを解く感覚で答えを求めることこそが数学だと思ってしまうのも仕方ありません。
「いかにして問題を解くか」といった側面も数学の醍醐味のひとつかもしれませんが,こういった数に関する奥深さを味わうことも,高校までの数学教育では必要なのではないかと思います。

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【有理数と整数は同じ個数?【いかに分数を並べるか】】
タグ:無限
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7の倍数の判定法 [数学研究室【一般向け】]

ある整数が7でわり切れるかどうかの判定法をご紹介します。

7でわり切れるかどうかは,実際に7で割った方が早いくらいなのですが,方法自体は面白いところもあります。

abcdefghijk
という整数があったとしましょう。
この整数を,下から3けたずつ区切っていきます。
ab cde fgh ijk
そしてこれを,下から奇数番目のグループと,偶数番目のグループに分けて和を取ります。
これらを,XとYとおきます。
奇数番目グループの和・・・X := cde + ijk
偶数番目グループの和・・・Y := ab + fgh
そして,XとYの差(大きい方から小さい方を引いたもの)が7で割り切れれば,元の整数も7で割り切れる。

というものです。
桁が大きくなってもやり方は同じです。

証明は,一般の場合はただ長ったらしくなるだけなので,簡単な場合のみ考えていますが,基本的な考え方は同じですので,以下のプリントをご覧ください。
7の倍数判定法.png

動画にもしてありますので,気になる方はご覧ください。

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算数手品【マジックスクエア】 [数学研究室【一般向け】]

選んだ4つの数の和が,必ず同じ数になるというマジックです。
プリントだと説明が難しいので,動画になりますが,
簡単にできますので,ぜひみなさんもやってみてください!
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数と方程式「なぜ虚数iが必要だったのか?」 [数学研究室【一般向け】]

数にはたくさんの種類があります。
自然数,整数,有理数,無理数
さらには2乗するとー1になるような虚数などという数もあります。

なぜこんなにたくさんの種類の数が必要だったのか,実は方程式と深い関係があるんです。
方程式が解を持つのか,持たないのか,数学の歴史の中でも非常に長い間研究されてきた問題です。
これに一定の終止符を打ったのは,あの天才数学者ガウスだったんです。

数式がやはりいくつか必要だったので,プリントにしましたが,ぜひご覧いただいてコメント等ご感想をいただければ幸いです。
数と方程式-01.png
数と方程式-02.png

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マイナスかけるマイナスはなぜプラス? [数学研究室【一般向け】]

マイナスかけるマイナスでなぜプラスになるの?

多くの方がこのような疑問を持ったことはあるのではないでしょうか?

なぜ疑問に思うのかといったら、マイナスとマイナスをかけるような場面が日常では滅多にないからなんですね。
例えば
2×3
をするような場面は日常でいくらでもあるので、誰しもが答えが6であると疑いません。
しかし、(-1)×(-1)をするような場面はなかなか想像できません。
想像できない場面だからこそ、答えがいくつになるのか、なかなか分からない、分かったとしてもいまいち納得ができないのです。

ですが、掛け算を使う公式で
道のり=速さ×時間
という公式がありますね。この「速さ」と「時間」や「道のり」は、次のようにマイナスの数を考えることができます。
・道のりは、今いる地点を0として、正面の方向をプラス、後ろの方向をマイナスとします。
・速さは、正面の方向に移動することをプラスの速さ、後ろ向きに進むことをマイナスの速さとします。
・時間は、今を0として例えば2時間後は「+2時間」、2時間前は「-2時間」と表せます。
そして例えば、(-20)km/hの速さで走る車を考えると、この車は後ろ向きに走っているのですから、今いる場所を0kmとして、
2時間後には、-40kmの地点にいる・・・(-20)×2 = -40
1時間後には、-20kmの地点にいる・・・(-20)×1 = -20
0時間後(今)は、0kmの地点にいる・・・(-20)×0 = 0
では、1時間前(-1時間後)にはどこにいたかというと、+20kmの地点にいたはずですね。
なぜかというと、この車は後ろ向きに走ってきたのですからね。
なので、速さ×時間の公式に当てはめると、
(-20)×(-1) = +20
となっているべきなんですね。

このように、日常の場面でも、若干無理矢理な感じはしますが、マイナスかけるマイナスを考えることはできなくもないのです。

他にも、なぜマイナスかけるマイナスをプラスとするのか、考え方がありますので、プリントにしておきましたので、ご覧ください。
マイナスかけるマイナス.png

実は、このプリントにあるように、
「マイナスかけるマイナスをプラスにしておかないと、数学的に都合が悪いから」
というのが一番の数学の中での理由なんです。
マイナスかけるマイナスをプラスとしておけば、今のところ何も矛盾は生じていないという点で、数学的に都合がいいんです。
では、本当にそれで矛盾が生じないのかという問題が出てきますが、実は「ゲーデルの不完全性定理」という定理があります。この定理で何が言えるか簡単に言うと、
マイナスかけるマイナスをプラスとして、矛盾が生じないことを証明することは不可能
という事なんですね。
(もちろん、ゲーデルはこのことだけを証明したのではありません。もっと広い意味で「数学の中だけで数学に矛盾がないことを証明することは不可能」といったことを証明したのです。)

なぜマイナスかけるマイナスをプラスとするのか、その結論としては、
・そのようにすると矛盾が今のところないから
ということなんです。

数学は自由な学問だと言われます。
ただし、矛盾を嫌う学問なんですね。
マイナスかけるマイナスをマイナスとするのは自由だけれど、それだと矛盾してしまうし、色々な計算の規則が崩れてしまう。
だから、マイナスかけるマイナスはプラスとしましょうというのが、本当の理由なのではないでしょうか。

*YouTubeでの解説*

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循環小数と等比級数の公式の関係 [数学研究室【一般向け】]

以前の記事
【無限小数と極限の関係】
にて、循環小数を整数に直す際に等比級数の公式を利用しました。
これは、循環小数がある極限を表しているということが明確に分かるように、あえてそうしたのですが、一般的にもっと簡単に循環小数を分数にする方法がありますね。
例えば、
0.35353535・・・
を分数に直すには、
A=0.35353535・・・
と、おきます。100AとAの差を取ってみます。
 100A=35.35353535・・・
-  A= 0.35353535・・・
99A=35
なので、
A=35/99
と表せることが分かりました。

この解法で非常に爽快な点は、無限にあった小数が、100倍して差をとることで消えてしまうという点にあります。
実はこの解法、高校で学習する等比級数の求め方とほぼ同じアイデアを使っているんです。
式がたくさん必要なので、プリントにしておきますが、「そうだったのか!」と思ってもらえれば幸いです。
循環小数と等比級数の関係-01.png
循環小数と等比級数の関係-02.png
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既約分数の性質 [数学研究室【一般向け】]

以前、既約分数の和についての問題を出しました。
⇒【既約分数の和(解説編)
その中で、残していた問題がありましたので、それについて考えたいと思います。

つまり、このような問題でしたね。

a/m が既約分数なら、和が1になるようなペア (m-a)/m も既約分数である。

例えば、既約分数3/8のペアは5/8ですが、これも確かに既約分数になっていますね。

これがどんな既約分数についても成り立つことを証明するのですが、文字を使うので少々難しいかもしれません。ただ、直感的に分かるような解説も載せてありますので、見てみてください。

既約分数の和(対称性の証明)-01.png
既約分数の和(対称性の証明)-02.png
タグ:既約分数
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無限小数と極限の関係 [数学研究室【一般向け】]

昨日、無限小数(特に循環小数)について、
1=0.9999・・・
という一見すると不思議な等式が成り立つことをお話ししました。
そして、この小数点以下ずっと9が続くという意味で「・・・」を書いていますが、これは実は極限の考えが含まれていることをお話ししました。
では、具体的にどのように極限の考えを使っているのか、はっきりとは書いていなかったので、こちらで解説しようと思います。

1分の3の証明-01.png
1分の3の証明-02.png

プリントでは、1=0.9999・・・ではなく、1/3=0.3333・・・について書いていますが、基本的には考え方は全く同じにできます。

今回、内容的に高校数学も必要でしたので、「一般向け」というカテゴリにて投稿させていただきましたが、何かのご参考になりましたら幸いです。
タグ:無限小数
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